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ルカノールは、2007年からボクサーパンツを中心とした男性下着を扱っている、小さなセレクトショップと情報サイトです。
店名の「LUCANOR(ルカノール)」は、中世スペインの説話集『ルカノール伯爵』に由来します。その一篇が、アンデルセンの『はだかの王様』の原型になりました。
なぜ下着屋が、700年前のスペインの本から名前を取ったのか。ここでは、その理由と、私たちが何を大切にしているのかをお話しします。
01王様は、その下着を穿いているThe Emperor Put It On
アンデルセンの童話『はだかの王様』。あの王様が身に着けていた下着とは、いったいどんなものだったのでしょうか。
私たちは想像します。お洒落に命を懸けたあの王様ならば、当然アンダーウェアにも妥協はなかったはずだと。もし彼が現代に生きていたら、世界中の上質な下着を蒐集し、その日の気分や場面に応じて、最高の一枚を選んでいたのではないでしょうか。
見えないところにこそ、こだわりを。
それが、ルカノールのはじまりです。
“裸の王様”は、滑稽でありながらもどこか愛らしい、お洒落を極めた存在です。私たちは彼のように、アンダーウェアにもこだわりを持ちたいと考えました。だからこそ世界各地の個性豊かなアンダーウェアを探し歩き、そのなかでも「これは」と思える逸品だけをセレクトしています。
ここは、あらゆる下着を取り扱う場ではありません。本当に惹かれたものだけを集めた、小さなセレクトショップです。

02ルカノールという名前The Origin of the Name
“ルカノール”とは、中世スペインの説話集『ルカノール伯爵(El Conde Lucanor)』に登場する人物の名です。1335年に成立したこの書には、「ある王といかさま機織り師たちの話」が収められています。それこそが、のちにアンデルセンが着想を得た『はだかの王様』の原型でした。
私たちはこの物語を現代に蘇らせたいと考えました。ただの引用ではなく、新たな物語として「王様の下着のセレクト」を提案する。それが、ブランド名『LUCANOR』に込めた意味です。
『ルカノール伯爵』とは
全51話からなる、いわば人生の知恵袋です。若き伯爵ルカノールが賢者パトロニオに助言を求めるたび、パトロニオは物語で答えを返し、最後に著者ドン・フアン・マヌエルが教訓を締めくくる。知恵と物語の交差点のような一冊です。
収められた話は、王侯貴族の駆け引きから、農夫と息子のささやかな諍いまで幅広く、そのどれもが「人はどう振る舞うべきか」という一点に向かっています。中世スペイン散文文学の到達点と評され、700年を経た今も読み継がれています。
日本語訳は、牛島信明・上田博人訳『ルカノール伯爵』(国書刊行会)で読むことができます。
- El Conde Lucanor(ルカノール伯爵)
- 1335年頃成立。全51話の教訓説話集。相談者ルカノール伯爵と賢者パトロニオの対話という枠物語の形式をとる。
- ある王といかさま機織り師たちの話
- 第32話。『はだかの王様』の原型とされる。原話では、真実を告げるのは子どもではなく、失うものを持たない馬丁である。
- 枠物語(わくものがたり)
- 物語の中に別の物語を入れ子にする構成。『千夜一夜物語』や『デカメロン』と同じ系譜にある。

03ドン・フアン・マヌエルという人The Storyteller
スペイン中世文学を代表する知性、ドン・フアン・マヌエル(1282年 – 1349年頃)。カスティーリャ王国の名門に生まれ、王家の血を引きながらも、波乱に満ちた人生を歩んだ人物です。
父マヌエル王子の早世により、幼くして王宮で育ち、12歳にしてムルシアの領主という大任を任されました。その後、摂政として若き王アルフォンソ11世の後見人を務めたものの、政治的対立から確執が生じ、一時は反旗を翻して内乱にまで発展します。しかしやがて和解し、再び王国の政治を支える重臣として帰還しました。三度の結婚を経て、彼の血筋は後のトラスタマラ朝へと受け継がれていきます。
政治家として名を馳せる一方で、彼は詩人・寓話作家としても偉大な足跡を残しました。生涯に14の著作を残し、現存するのは5作。そのなかでとりわけ高く評価されているのが『ルカノール伯爵』です。
- 1282
誕生
カスティーリャ王フェルナンド3世の孫として生まれる。父はマヌエル王子。
- 1294
12歳でムルシア領主に
父の死により早くから領主の責を負い、宮廷政治のただなかで育つ。
- 1320s
摂政として国政を担う
幼王アルフォンソ11世の後見人となるが、のちに王と対立する。
- 1335
『ルカノール伯爵』成立
全51話の説話集。スペイン散文文学の飛躍点と評される。
- 1349
没
その血筋は、のちのトラスタマラ朝へと受け継がれた。
『LUCANOR』という名前は、この文学的遺産に敬意を表し、物語と美意識を「下着」という形で現代に再構築する試みです。
04現代版「裸の王様」He Wore His Own Aesthetic
昔むかし、とある国にお洒落を愛する王様がいました。ある日、王様は巧妙な詐欺師に騙され、“愚か者には見えない衣”を身にまとってパレードへと出かけます。誰もが口をつぐむなか、ひとりの子供が声をあげました。
「王様は裸だよ!」
この瞬間、物語では王様が恥をかく。それが私たちの知る“裸の王様”の結末です。けれど、本当にそうだったのでしょうか。
LUCANORが描く現代版の王様は違います。彼は嘲笑の的などではなく、むしろその潔さと美意識によって、人々を魅了したのです。なぜなら彼は、どんなときでもアンダーウェアにすらこだわりを持つ、美意識の体現者だったから。
見えなくとも、誰に見られなくとも、身にまとうものすべてに自分の美学を込める。それが本当の男の品格であり、お洒落の本質なのだと私たちは考えます。
“裸”とは、装飾を取り払った本質。そして“アンダーウェア”とは、その本質を守り、彩る最後の一枚。王様は、決して裸ではありませんでした。彼は自分というスタイルを纏っていたのです。

05H.C.アンデルセンという“物語を生きた人”Hans Christian Andersen
1805年、デンマークのオーデンセという小さな町に、ひとりの夢見る少年が生まれました。名はハンス・クリスチャン・アンデルセン。のちに世界中の子どもたちと大人たちの心を揺さぶる、あの『はだかの王様』を生み出す作家です。
父は病弱な靴職人。母は読み書きもおぼつかない洗濯婦。家族はひとつの部屋で肩を寄せ合い、日々を生きていました。しかしアンデルセンのなかには、幼い頃から想像力という名の王国が広がっていました。
父の死後、オペラ歌手を夢見てコペンハーゲンへ向かったものの、現実は厳しく、挫折を重ねます。けれども王族や政治家の支援を受け、彼は教育を受ける機会を得ました。旅を重ね、苦しみ、恋に破れながらも、物語を書くことで自分の人生を語り直す術を見出していったのです。
1835年、初の小説『即興詩人』とともに『童話集』を発表。このなかに収録されたのが、のちに世界中で知られることになる『はだかの王様』でした。
しかしこの物語は、単なるユーモアではありません。その背景には、アンデルセン自身の貧困・孤独・格差社会への疑問が込められています。見えるものだけが真実ではない。人の評価や世間の常識が真実を覆うこともある。だからこそ、子供の純粋な声が王様の“真の姿”を暴いたとき、それは単なる嘲笑ではなく、本当の美しさとは何かを問いかける“鏡”だったのかもしれません。
アンデルセンは最期まで結婚することはなく、恋にも恵まれませんでした。それでも彼の葬儀には、王族から浮浪者までが集まり、涙を流したといいます。それはきっと、彼が“ひとりひとりの心に語りかける”作家だったからでしょう。
彼の人生そのものが、まるで一編の童話。そして『LUCANOR』が紡ぐ“現代の裸の王様”もまた、そんなアンデルセンの魂に、静かに敬意を捧げています。

06私たちが守っている4つのことOur Promise
物語をブランド名に掲げる以上、それを日々の仕事に落とし込まなければ意味がありません。ルカノールが2007年から変えずに守っていることが4つあります。
一枚ごとの違いを大切にする
デザイン、素材、シルエット、機能性。下着の魅力は、ブランドや一枚ごとに異なります。知名度や品数だけでなく、それぞれの個性が伝わり、選ぶ楽しさにつながる品揃えを大切にしています。
「見えない」を言い訳にしない
下着は人に見せるものではありません。だからこそ、縫製・生地・パッケージまで手を抜いたものは置きません。誰も見ていないところの品質が、その一枚の本当の価値です。
売る前に、知ってもらう
サイズ・素材・生地混率・種類・機能・お手入れ。この情報サイトを20年近く書き続けているのは、選択の理由を持って選んでほしいからです。合わないものを買わずに済むことも、私たちの仕事だと考えています。
贈り物として恥ずかしくない状態で届ける
ラッピング、グリーティングカード、梱包。届いた瞬間の景色まで含めて商品だと考えています。
数字で見るルカノール
ルカノールは情報サイトです。商品のご購入は、姉妹サイト「ルカノールストアー」で承っています。ブランドの背景をもっと読みたい方は、読みもの専用サイト「LUCANOR STORY」もあわせてご覧ください。
